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コラム

2025年度遺族年金制度改正のポイントと最新情報

カテゴリ: コンシェルジュ通信 公開日:2025年03月04日(火)
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2025年度の遺族年金制度改正は、男女間の格差を是正し、共働き社会に対応するための重要な変更です。主な改正点として、男女ともに5年間の有期給付へ移行、年収850万円の収入要件撤廃、「死亡時分割」制度の創設などが挙げられます。さらに、有期給付期間中の年金額増額や中高齢寡婦加算の廃止も予定されています。本記事では、改正の背景や最新情報、今後のスケジュール、準備すべきポイントを詳しく解説します。

 

遺族年金制度改正の背景と目的

これまでの遺族年金制度は、もともと男性が大黒柱として働き、女性が家庭を守るという伝統的な家族モデルを前提に設計されていました。しかし、現代日本では共働き世帯が増加し、厚生労働省は2040年までに男女の就業率が同等になると予測しています。このような社会変化に対応するため、男女間で大きく異なる現行の遺族年金制度を見直す必要性が生じています。

 

現行制度では、配偶者を亡くした女性は30歳以上であれば無期限(※)で遺族年金を受給できますが、男性は55歳以上かつ年収850万円未満でなければ受給資格がありません(受給開始は60歳以降)。今回の改正は、こうした性別による不公平を解消することが主な目的の1つです。

 

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※ 女性の場合も、男性と同様に年収制限があります。また、遺族厚生年金は、自身が老齢厚生年金を受給できるようになった場合、遺族厚生年金と老齢年金の調整が行われます。

 

 

2025年度遺族年金改正の決定状況

2025年度の遺族年金制度改正については、厚生労働省の社会保障審議会(年金部会)で詳細な検討が行われており、改正の方向性や主な内容はある程度固まっていると考えられます。

 

ただし、現時点(2025年3月4日)では法案化・国会での審議や可決成立は行われていません。今後、国会に法案が提出され、可決された後、具体的な施行日や詳細な運用方法が決定される見込みです。法案化や国会内での議論の結果、内容が変わる可能性がある点、注意が必要です。

 

今回の改正では、共働き世帯の増加を踏まえ、性別による固定的な役割分担に依存しない制度への移行を目指すものです。

 

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2025年度遺族厚生年金の主な改正点

今回の改正では、遺族厚生年金の給付方法や条件が大きく変わる予定です。現在、議論されている主な改正内容を解説します。

① 5年間の有期給付への変更

現在、子のいない30歳以上の女性は無期限で遺族厚生年金を受給できますが、改正後は男女ともに原則5年間の有期給付となります。

 

ただし、5年後も十分な生活再建ができない場合には、所得や障害の状況に応じて継続給付が検討されます。

 

なお、子どものいる家庭では、従前通り、遺族基礎年金・遺族厚生年金ともに受給できます。

② 有期給付加算の創設(年金額の増額)

新たに「有期給付加算」が設けられ、有期給付期間中の年金額が増額される予定です。これは、配偶者の死別による経済的な影響を軽減するための措置と考えられます。

③ 「死亡時分割」の導入

配偶者が死亡した場合に年金記録を分割する制度(死亡時分割)が新たに創設されます。これにより、65歳到達時に年金額が増える可能性があります。

④ 年収850万円の収入要件の撤廃

現行制度では、男性が遺族厚生年金を受給するためには、年収850万円未満であることが条件でしたが、この要件は撤廃される予定です。収入の多寡に関係なく、死別による影響を考慮する形に変更されます。

⑤ 中高齢寡婦加算の廃止

現行の「中高齢寡婦加算」が廃止されます。この加算は主に女性を対象としていましたが、男女平等の観点から見直されることになりました。

段階的な実施スケジュール

この改正は、一度にすべて適用されるのではなく、段階的に実施される予定です。

  • 女性の有期給付の対象年齢は、まず30歳から40歳に引き上げられ、その後約20年かけて60歳まで引き上げる計画です。
  • 男性については、施行日から年齢要件が撤廃され、60歳未満でも受給可能になります。

 

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今後のポイントと準備すべきこと

2025年度の遺族年金制度改正は、男女平等を推進し、共働き社会に適した制度に変更するための大きな転換点となります。

  • 男女ともに、原則5年間の有期給付へ
  • 有期給付期間中の年金額増額(有期給付加算の創設)
  • 年収850万円の収入要件を撤廃
  • 中高齢寡婦加算の廃止
  • 「死亡時分割」制度の創設

 

これにより、従来の性別役割に基づく制度から、男女ともに働くことを前提とした制度へと移行します。ただし、経済的な影響を受ける人への配慮として、段階的な導入や継続給付の仕組みも検討されています。

 

今後、厚生労働省や関連機関の公式発表を注視し、施行日や具体的な運用方法を確認することが重要です。また、この改正に備え、自身の状況に応じた対策や準備を進めていくことをおすすめします。

 

【参考】社会保障審議会年金部会 (2024年12月24日)

資料1 社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)(PDF)

参考資料1 年金制度改正の検討事項(PDF)

 

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(執筆:ファイナンシャルプランナー 平野泰嗣)

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