遺言書と遺産分割協議で最優先すべきことは何か?
夫の遺産、妻と子どもで、どう分けると安心か?
どの家庭にも、いつかは訪れる相続。各メディアでは、相続対策に関する話題が頻繁に取り上げられるようになりました。中でも、相続税法改正に関連した「相続税対策」と、相続人間の争いに関連した「争族対策」が話題の中心になっています。
土地活用による相続税対策や、争族対策のための遺言書作成など、いろいろな対策はありますが、実際には、特に相続対策をすることなく、そして、遺言書を作成することなく、相続が発生するケースがほとんどです。また、最も多いケースは、夫が先に亡くなり、妻と子どもで財産分け(遺産分割)をするケースです。
妻と子供の遺産分割、法定相続分で良いか?
国分家(仮名)は、ご主人の国分太郎さん(享年75歳)、妻の華子さん(72歳)、長男の一郎さん(45歳)、麻衣さん(43歳)の4人家族でした。法定相続分は、妻1/2、子1/2(長男1/4、長女1/4)になります。法定相続分通り分けるとすると、預貯金は、妻1,500万円、子各々750万円になります。不動産は法定相続通り共有持ち分としても、一郎さんも、麻衣さんもマイホームがあるので、このまま華子さんが住み続けることに問題はない状況です。
最優先で考えるべきは、妻の老後の生活遺産の分け方は、法定相続分が本当に正しい(円満な解決といえる)のでしょうか。法定相続分と聞くと、その通りに分けなければならないという印象を受けますが、遺言書がない限り、相続人間で自由に遺産分割をすることができます。法定相続分は、争いが起きた場合に解決するための配分を法律が決めていると考えると良いでしょう。従って、妻と子どもで、遺産分割をする場合、妻(子供から見れば母)の老後の生活が安心できることを最優先として、財産分けをするべきなのです。ここで、「法定相続分通りに」とか、「相続税を節税するために」という議論は持ち込んではいけないと個人的には思います。
最低限、妻が受け取る遺産の見積もり方法
妻が受け取る最低遺産額を見積もるために、以下の情報が必要になります。
(国分家)
1.遺族年金・妻の年金(年)・・・200万円
2.残された妻の生活費(年)・・・260万円
3.将来の一時的な支出の見積もり・・・500万円
4.妻に何かあった時に安心な金額・・・500万円
5.妻固有の金融資産・・・380万円
【計算式】妻が受け取る遺産額(除く不動産)=(②-①)×老後の期間(95歳迄)+③+④-⑤
※国分家のケースでは、2,000万円となります。
この計算結果を受けて、国分家では、預貯金の配分として、華子さん2,000万円、一郎さんと麻衣さんは各々500万円にしようということにまとまりました。自宅については、将来、介護施設に入る場合の入居資金に充てるため、華子さんが全て相続することにしました。華子さんに相続が起こっても相続税はかからないという見通しもついたからです。
遺産分割協議と遺留分の関係は?
結果、華子さんの相続財産は時価で5,000万円、一郎さんと華子さんは各々預貯金500万円になります。最低保障される相続割合として、遺留分があります。遺留分は、配偶者と子は、法定相続分の半分なので、妻1/4、子1/4(一郎さん、麻衣さんは1/8)です。一郎さん、麻衣さんの遺留分は750万円と計算されます。
ただし、遺留分とは、遺言書による相続割合の指定があった時に、最低限保障される相続割合なので、遺産分割協議とは関係ありません。遺産分割協議は、相続人間で自由に配分を決めることができるのです。
遺言書を書く場合も考え方は同じ
今回は、遺産分割の場面で妻の受け取る遺産の考え方を紹介しましたが、夫が遺言書を書く場合も、遺された妻の老後の生活保障を最優先して相続配分を決めることが大切です。また、残されたご家族が、安心して暮らして行けるように、お互いのライフプランに配慮することも大切です。
LFCでは、ご遺族のライフプランを基準に財産分けの方針を策定するお手伝いをしています。