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コラム

成年後見制度はどう変わる?改正の背景と新旧比較、これからの備えをFPが解説

カテゴリ: FP夫婦のふたり言 公開日:2026年03月30日(月)
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改正の背景と、これからの備えをFPがわかりやすく解説

「認知症になったら、自分のお金は誰が管理するのだろう」

「親の判断力が落ちてきたとき、家族はどこまで関われるのだろう」

「成年後見制度は必要そうだけれど、使いにくいと聞く」

 

高齢化が進む中で、こうした不安を感じる人は少なくありません。

成年後見制度は、判断能力が不十分になった人を支えるための大切な制度ですが、現行制度には「使いづらさ」があることも長く指摘されてきました。

 

今回、法制審議会では、成年後見制度の見直しに関する要綱案が示されました。大きな方向性は、これまでのような「能力に応じて制度を機械的に当てはめる仕組み」から、「その人に本当に必要な支援を、必要な範囲で組み立てる仕組み」へと重心を移していくことにあります。

 

この記事では、今回の見直しの背景、制度の概要、新旧制度の違い、私たちの暮らしにどう関わるのか、そして今から考えておきたいことを、FPの視点から整理します。

 

 

なぜ今、成年後見制度の見直しが進められているのか

今回の見直しの背景には、大きく三つの事情があります。

1. 高齢化の進展と認知症・判断力低下への備えの必要性

高齢化が進む日本では、認知症や加齢、障害などにより、契約や財産管理の判断が難しくなる人が今後さらに増えることが見込まれています。

 

預金の管理、不動産の売却、相続手続、介護施設との契約など、判断能力が必要になる場面は思っている以上に多く、成年後見制度の役割はむしろこれから大きくなるはずです。

2. 現行制度の「使いにくさ」

一方で、現行の成年後見制度は、必要な支援よりも広い制限がかかることがあるため、本人や家族が利用をためらう原因にもなってきました。

 

たとえば、ある手続だけ手伝ってほしいのに、制度に乗せたことで広く本人の行為能力が制限される。あるいは、一度始めると原則として継続しやすく、柔軟にやめたり縮小したりしにくい。そうした点が「制度は知っているが、使いたくはない」という空気を生んできた面があります。

3. 本人の意思をより重視する流れ

今回の資料では、補助人や任意後見人が事務を行う際、本人に情報を提供し、陳述を聴き、その意向を把握し尊重することが明確に打ち出されています。

 

つまり、単に「守る」だけではなく、本人の意思をできるだけ支えながら制度を運用する方向が、これまで以上に強く意識されているということです。

 

 

今回の見直しのポイントを一言でいうと

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今回の制度見直しを一言で表すなら、

 

「全面的に保護する制度」から、「必要な支援を必要な範囲で組み合わせる制度」へ

 

という変化です。

 

現行制度では、本人の判断能力の状態に応じて「補助・保佐・後見」という三つの制度に分かれていました。

これに対し、見直し案では、法定後見制度を実質的に「補助」を中心とする仕組みに再構成し、その中で

 

  • 特定の行為について代理権を付ける
  • 特定の重要な財産行為について同意・取消しの仕組みを設ける
  • 必要に応じて特定補助人を付ける

 

といった形で、支援の中身を選んでいく方向が示されています。

 

 

現行制度と見直し後の制度の違い

まずは全体像を、生活者目線で整理してみます。

観点現行制度見直し後の方向性
制度の立て方 後見・保佐・補助の3制度に分かれる 補助制度を中心に再構成
制度選択の基準 判断能力の程度で制度が決まりやすい 必要な支援内容に応じて設計
支援の範囲 制度ごとに広めに定まる 必要な範囲を個別に定める
本人の自由 制限が大きくなりやすい 必要最小限の制限を志向
本人の意思 配慮規定はあるが、制度上は保護色が強い 意向把握・情報提供・意思尊重を明確化
制度の終了・見直し 継続しやすく、柔軟性に乏しい面がある 必要がなくなれば取消し・縮小を想定

 

見直し案の要点は、「判断能力が低下したら、決まった箱に入れる」という発想から、「何に困っていて、どこに支援が必要か」を起点に制度を考える方向へ移ることにあります。

 

 

具体的にどのような仕組みになるのか

1. 補助開始の審判

見直し案では、精神上の理由により事理を弁識する能力が不十分である人について、家庭裁判所が補助開始の審判をすることができます。申立権者には本人、配偶者、四親等内親族、未成年後見人等、検察官のほか、本人が公正証書で指定した者も含まれます。

 

また、本人以外の請求で補助開始の審判をするには、原則として本人の同意が必要とされています。本人の意思が制度利用の入口でも重視されていることが分かります。

2. 要同意事項の審判

家庭裁判所は、必要があると認めるとき、本人が特定の行為をするには補助人の同意を要する旨の審判をすることができます。

対象となるのは、たとえば次のような重要な行為です。

 

・預貯金の払戻し

・借入れや保証

・不動産など重要財産の処分

・訴訟行為

・贈与や和解

・相続の承認・放棄や遺産分割

 

同意なくした行為は取り消すことができるとされています。

一方で、日用品の購入など日常生活に関する行為は対象外です。ここにも、必要以上に日常生活を制限しない考え方が表れています。

3. 代理権付与の審判

特定の法律行為について、補助人に代理権を与えることもできます。

 

たとえば、不動産売却、施設入所契約、金融機関との手続など、必要な場面に絞って代理権を付けるイメージです。

現行の後見のような包括的な代理ではなく、「何を代わりにできるのか」を個別に定める方向です。

4. 特定補助人を付する処分

本人が「事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、かつ必要があると認められる場合には、特定補助人を付する処分が想定されています。

 

特定補助人には、一定の重要行為の取消権、意思表示の受領、財産の保存行為などの権限が与えられます。

この仕組みは、現行の後見・保佐が担っていた機能の一部を、補助制度の中で必要に応じて組み直すものと理解できます。

 

 

任意後見についても見直しが及ぶ

今回の資料は、法定後見だけでなく任意後見にも及んでいます。

任意後見制度についても、定義、公正証書による契約方式、予備的な任意後見受任者、不開始の合意、補助制度との関係、本人の意向の尊重、任意後見人の解任や契約解除などが整理されています。

 

私たちにとって重要なのは、今回の見直しが「法定後見か任意後見か」の二者択一ではなく、本人の意思をどう支えるか、どの制度をどの場面で使うかという設計全体を見直す動きだという点です。

 

 

私たちの暮らしに、何が変わるのか

「全部任せる」ではなく「必要なところだけ支える」方向へ

これまでの制度は、いったん使うと広い範囲に影響が及ぶ印象がありました。

見直し後は、たとえば

 

  • 不動産売却だけ代理してほしい
  • 相続手続だけサポートが必要
  • 詐欺被害防止のために一部行為に取消しの仕組みがほしい

 

といった、より限定的な使い方がしやすくなる可能性があります。

本人の意思確認がこれまで以上に重要になる

補助人や任意後見人は、事務に関する情報提供を行い、本人の陳述を聴き、意向を把握し、それを尊重することが明文化されています。

 

つまり、制度が使いやすくなるだけでなく、「本人はどうしたいのか」を事前に言葉にしておくことの価値が、これまで以上に高まるといえます。

家族の関わり方も見直しやすくなる

現行制度では、家族が「制度を使うと、かえって何もできなくなるのでは」と感じる場面もありました。

見直し後は、家庭裁判所が必要な支援内容を個別に定める方向になるため、家族・本人・専門職の役割分担を、より現実に合わせて考えやすくなる余地があります。

 

 

今後考えておきたいこと~FPからのアドバイス

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成年後見制度の見直しは、老後のお金、住まい、介護、相続、家族関係と深くつながるテーマです。FPの立場からは、次の点を早めに考えておくことが大切だと感じます。

1. 誰に、どこまで任せたいか

「もしものとき」は、誰かに全部任せるか、誰かが全部決めるか、という極端な話ではありません。

 

大切なのは、

 

・誰に関わってほしいか

・どの範囲まで任せたいか

・逆に、どの部分は自分で決め続けたいか

 

を整理しておくことです。

2. 財産の見える化をしておく

制度の利用以前に、預金口座、不動産、保険、有価証券、借入、毎月の支出などが整理されていないと、家族も専門家も支援しにくくなります。

 

今回の見直しは制度を柔軟にする方向ですが、土台となる情報がなければ、その柔軟性も生かせません。

3. 相続対策と切り離して考えない

判断能力の低下は、相続対策を進めたいと思った時期に重なることが少なくありません。

遺言、任意後見、家族信託、財産管理委任契約、保険の活用など、複数の制度や仕組みをどう組み合わせるかは、個別事情によって変わります。

 

成年後見制度改正の議論は、「何を使うか」よりも「どう備えを設計するか」を考える契機として捉えるのがよいでしょう。

4. 本人の言葉を残しておく

今回の見直しで特に印象的なのは、本人の意向把握と尊重が、補助でも任意後見でも明確に位置付けられていることです。

だからこそ、元気なうちに

 

・どこで暮らしたいか

・不動産をどうしたいか

・家族にどこまで頼みたいか

・どんな支出は続けたいか

 

を言葉にしておくことが、制度の使い勝手そのものを左右します。

 

 

まとめ

今回の成年後見制度の見直しは、

「判断能力が落ちたら広く制限する制度」から、「必要な支援を必要な範囲で行う制度」へ

という、大きな方向転換を示しています。

 

その中核にあるのは、

 

・補助制度を中心に再構成すること

・代理・同意・取消しを必要に応じて個別に組み合わせること

・本人の意向把握と尊重を明確にすること

 

です。

 

制度が柔軟になることは歓迎すべき流れですが、制度だけで将来の不安がなくなるわけではありません。

本当に大切なのは、元気なうちに、自分の意思と家族の役割分担、お金の管理のあり方を話し合い、見える形にしておくことです。

 

成年後見制度の改正は、「これからの人生を、どう自分らしく支えていくか」を考えるきっかけとして受け止めたいテーマです。

 

(執筆:ファイナンシャルプランナー 平野泰嗣)

  

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