資産課税の新時代へ:不動産評価見直しと2026年税制改正が家計に与える影響

近年の税制改正により、不動産の相続税評価は市場実態に近づける方向で見直しが進んでいます。2024年のタワーマンション課税の補正導入に加え、2026年税制改正大綱では貸付用不動産や不動産小口化商品の評価見直しが示されました。
本記事では、こうした制度変更の背景を整理するとともに、これからの時代に求められる資産の持ち方と、長期的な視点での家計設計の考え方について解説します。
相続税評価は「公平性重視」へと転換
近年の税制改正を振り返ると、日本の資産課税は大きな転換期に入っているといわれています。とくに相続税においては、「税負担の公平性」をより重視する方向が明確になってきました。
これまでの制度では、資産の種類によって相続税評価額に差が生じやすい構造がありました。一般に、不動産は路線価などを基準に評価されるため、市場価格(時価)よりも低くなる傾向があります。一方、現金や上場株式は時価に近い水準で評価されます。
そのため、同じ1億円相当の資産であっても、保有形態によって相続税評価額が異なる場合があり、結果として税負担にも差が生じることがありました。こうした背景から、近年の税制改正では、「資産の形式ではなく実態に即した評価」を重視する方向へと見直しが進められています。
タワーマンション課税の見直し(2024年)
その象徴的な例が、2024年に導入された、いわゆる「タワーマンション課税」の見直しです。
タワーマンションでは、一般的に高層階ほど市場価格が高くなる傾向があります。しかし、従来の相続税評価では、建物部分の評価は主として床面積を基準に算定されるため、高層階と低層階の評価額に大きな差が生じにくい仕組みとなっていました。
このため、市場価格と相続税評価額との間に大きな乖離が生じるケースも見られました。
こうした状況を踏まえ、2024年以降は、
- 築年数
- 総階数
- 所在階
- 敷地狭小度
などを踏まえて、一定の条件に該当する場合には評価額を補正する仕組みが導入されています。
この見直しは、「市場実態との大きな乖離を是正する」という観点から行われたものであり、今後の資産評価の考え方を示す重要な制度改正と位置づけられています。

2026年度税制改正大綱:不動産評価のさらなる見直し
さらに、2026年度税制改正大綱においては、不動産の相続税評価に関して、より踏み込んだ見直しの方向性が示されました。
その一つが、貸付用不動産の評価方法に関する見直しです。
具体的には、相続開始前の一定期間内(現時点では5年以内とされる方向性)に取得または新築された賃貸用不動産については、従来の路線価等を基準とした評価ではなく、取得価額を基準とした評価を行うことが検討されています。
実務上の評価水準については、取得価額の一定割合(おおむね80%程度)を基準とする方向が示されていますが、具体的な運用については、今後の法令や通達等によって明確化されることになります。
また、不動産小口化商品についても、従来の評価方法の見直しが検討されており、原則として市場価格(時価)を基準とした評価へと移行する方向性が示されています。
なお、上場REITについては、もともと市場価格による評価が行われているため、今回の見直しの対象とはされていません。

制度改正の背景にある考え方
これらの見直しに共通しているのは、
「資産の形式ではなく、実質的な経済価値に基づいて評価する」
という考え方です。
これまでの制度では、資産の持ち方によって評価額に差が生じることがありましたが、今後は、より市場実態に近い評価へと近づいていく方向が示されていると考えられます。
これは、特定の資産が不利になるというよりも、資産の種類による評価の偏りを調整し、制度全体としての公平性を高めるための見直しと位置づけられています。
短期的な対策より、長期的な資産設計の重要性
こうした制度の見直しは、資産家や富裕層に限らず、今後の家計に間接的影響を及ぼす可能性があります。
とくに重要と考えられるのは、
- 相続直前の短期的な対策だけに依存しないこと
- 資産の保有目的や役割を明確にすること
- 長期的な視点で資産構成を考えること
といった視点です。
たとえば、
- 自宅として保有する不動産
- 収益を目的とした投資用不動産
- 流動性の高い金融資産
それぞれには異なる特徴があります。
税務面だけでなく、
- 収益性
- 流動性
- リスク
- ライフプランとの整合性
といった観点を含めて、総合的に検討していくことが、これまで以上に重要になると考えられます。
「何をするか」より「どう持つか」の時代へ
これまでの相続対策では、「相続の直前にどのような対策を行うか」という点に注目が集まりがちでした。
しかし、近年の制度改正の流れを見ると、
「どのような考え方で資産を保有しているか」
という点そのものが問われる時代へと変化しているといえるかもしれません。
資産は、単に税負担を軽減するための手段ではなく、
- 暮らしを支える基盤
- 将来の安心を支える備え
- 次世代へ受け継ぐもの
としての意味を持っています。
制度の変化を正しく理解しながら、ご自身のライフプランに沿った形で資産を整えていくことが、結果として安心につながるのではないでしょうか。
LFCからのご案内
資産課税の制度は、社会環境や経済状況の変化に応じて、今後も見直しが行われる可能性があります。
大切なのは、制度の変化に振り回されるのではなく、
「ご自身の人生にとって、その資産がどのような意味を持つのか」
という視点から、資産全体を見つめ直すことです。
LFCでは、ライフプラン全体の中で資産をどのように位置づけるかについて、将来設計の視点から整理するお手伝いを行っています。
制度改正をきっかけに、ご自身の資産の整理や今後の方向性について確認してみたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
初回のご相談では、特定の金融商品や対策を前提とするのではなく、現在の状況やご意向を丁寧にお伺いしながら、全体像を整理するところからサポートいたします。
※本記事は、「2026年 暮らしと資産のコンシェルジュ通信・新春号」の記事に一部加筆・修正を行ったものです。
▶参考情報:
・令和8年度(2026年度)税制改正の大綱(財務省HP)※PDFが開きます
(執筆:ファイナンシャルプランナー 平野泰嗣)

