【第10回】住宅ローンの返済期間はどのくらいがベスト?返済期間についての考え方
住宅ローンは、一生に一度の大きな買い物である住宅購入に欠かせないものです。しかし、住宅ローンを組むときには、借入金額や金利だけでなく、返済期間も重要な要素です。返済期間は、毎月の返済額や総支払額、将来のライフプランなどに大きな影響を与えます。では、住宅ローンの返済期間はどのくらいがベストなのでしょうか?この記事では、住宅ローンの返済期間について、以下の3つのポイントを解説します。
住宅ローンの返済期間には制限がある
住宅ローンを組むときには、自分で好きなだけ長く借りることができるわけではありません。金融機関によっては、借入期間や完済年齢に制限が設けられています。一般的な住宅ローンでは、借入期間の最長は35年としている場合が多く、完済年齢は75歳から80歳としている場合が多いです。したがって、実際に借りられる期間は、「完済年齢-現在年齢」と「最長借入期間」のうち短い方になります。
例えば、完済年齢が75歳で最長借入期間が35年とすると、45歳で住宅ローンを組む場合は、最長でも30年までしか借りられません。また、自分が定年退職するまでに返したいと考える場合も、借入期間を短くする必要があります。45歳で住宅ローンを組む場合は、定年退職までの期間は15~20年程度ですから、その範囲内で返済計画を立てる必要があります。
住宅ローンの返済期間と返済金額の関係を理解する
住宅ローンの返済期間を決めるときには、毎月の返済金額や総支払額との関係も考慮しなければなりません。一般的には、返済期間が長ければ長いほど、毎月の返済金額は少なくなりますが、その分利息や保証料などのコストが高くなります。逆に返済期間が短ければ短いほど、毎月の返済金額は多くなりますが、総支払額は少なくなります。
例えば、3000万円の住宅ローンを固定金利2%で組むと仮定すると、借入期間ごとの毎月返済金額、総支払額は、以下のようになります。
借入期間 | 毎月返済金額 | 総支払金額 |
---|---|---|
20年 | 151,765円 | 3,642万円 |
25年 | 127,156円 | 3,815万円 |
30年 | 110,885円 | 3,992万円 |
35年 | 99,378円 | 4,174万円 |
20年と35年とで住宅ローンを組んだ場合を比較してみると、毎月返済金額は、35年の時の方が約5万円少なくてすみますが、総支払額は約500万円多くなります。つまり、返済期間が長いほど、毎月の返済負担は少なくて済むけれども、一生涯を通しての返済負担は重くなるといえます。
また、住宅ローンの金利タイプによっても、返済期間と返済金額の関係は変わってきます。固定金利とは、借入時に決めた金利が一定期間変わらないタイプです。変動金利とは、市場の金利に応じて借入時に決めた金利が上下するタイプです。固定金利の場合は、返済期間が長いほど支払利息額が多くなりますが、変動金利の場合は、将来の金利動向によって支払利息額が変わります。変動金利の場合は、金利上昇リスクを考慮して、返済期間を短くするか、または固定金利に切り替えるかを検討する必要があります。
ライフプランに合わせた返済期間
将来のライフステージの変化を踏まえた返済額を考える
住宅ローンのシミュレーションをして、毎月の返済金額がわかり、今の家計なら十分返していけると安心しては危険です。家計の支出は、お子様の成長に合わせて、教育費も生活費も上がっていくのが通常です。また、住宅ローンの返済だけではなく、老後に備えて貯金もしていかなければなりません。将来の家計も予想しながら、安心して返せる返済金額にしなければなりません。
※出所:「平成26年全国消費実態調査 二人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果 結果の要約」(総務省統計局)より転載
大事をとって長めに借りるは正解か?
ギリギリの返済は怖いので、長めに借りて、繰上げ返済しよう、と考える人も多いです。けれども、よほど意志が強い人でないと、計画的に繰り上げ返済を行うことができないのが実際です。不思議なことに、お金はあると使ってしまうのが通常の人です。
例えば、定年まで20年とした場合、20年で借りると毎月の返済が厳しいので、少し余裕を見たいといった場合、状況にもよりますが、定年までの期間+5年の25年間で返済できるような資金計画だと安心です。また、35年でもローンを組むとした場合でも、20年で借りた場合の毎月返済金額との差額分は、積立貯金をしておくなど、定期的に繰り上げ返済を行う仕組みを作る必要があります。
住宅ローンを短く借りた方が良い人、長く借りた方が良い人
住宅ローンを短く借りて良い人
- 家計に余力があり、毎月の返済額が上がっても問題ない
- 住宅ローン減税が受けられない、もしくは減税額が少ない(年収や建物の要件(築年数が古い等))
- 老後の保障は不要(十分な預貯金があったり、別途保険に入ったりしている等)
- 借金が嫌い
短く借りる場合のメリットは、支払利息額が少なくなるという点です。デメリットは、毎月の返済額が上がることや、住宅ローン減税や団体信用生命保険の恩恵を受けにくくなることです。
住宅ローンを長く借りて方が良い人
- 毎月の返済額を抑えたい
- 住宅ローン減税を最大限に活用したい
- 団体信用生命保険で老後の保障をしたい
- 金銭的な余裕があれば繰り上げ返済をする
長く借りる場合のメリットは、毎月の返済額が下がることや、住宅ローン減税や団体信用生命保険の恩恵を受けやすくなることです。デメリットは、支払利息額が多くなることや、金利上昇リスクが高まることです。
まとめ:住宅ローンの返済期間を自分に合わせて選ぶ方法
住宅ローンの返済期間を決めるときには、自分の家計やライフプランに合わせて選ぶ必要があります。以下のようなポイントを参考にしてみてください。
- まずは自分の収入と支出を把握して、毎月どれくらいの返済額が可能かを見積もる
- 将来的に収入や支出が変わる可能性を考慮して、余裕を持った返済計画を立てる
- 住宅ローン控除(所得税や住民税から一定額を控除してもらえる制度)や団体信用生命保険(住宅ローンの借り手が死亡や障害などで返済不能になった場合に残債を一括で支払ってくれる保険)などのメリットを活用する
- 余裕資金ができたときに繰り上げ返済をすることで、返済期間を短縮する
住宅ローンの返済期間は、短すぎても長すぎても良くないです。自分に合った適度な返済期間を選ぶことが大切です。住宅ローンのシミュレーションや相談は住宅ローンのシミュレーションや相談は、金融機関やファイナンシャルプランナーなどの専門家に依頼することができます。また、インターネット上にも住宅ローンのシミュレーションツールがあります。例えば、以下のサイトでは、借入金額や金利、返済期間などを入力すると、毎月の返済金額や総支払額を計算してくれます。
・住宅ローンシミュレーション(住宅金融支援機構)
住宅ローンは一生に一度の大きな買い物です。自分の家計やライフプランに合った返済期間を選ぶことで、安心して住宅購入をすることができます。ぜひ、この記事を参考にして、住宅ローンの返済期間について考えてみてください。
(執筆:平野泰嗣)
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